クリスキットとは
20世紀末にまだオーディオコンポがブームだった頃がありました。
クリスキット理論
その理論を以下の通り分析しました。
①回路の模倣・改良戦略
当時の世界各国のアンプを比較して、もっとも高音質な製品を探しました。
どうもJBLの回路だったようです。
回路設計をする技術資源が無かった為と思われますが、最良の回路を模倣したとのことです。
部品を日本製に入れ替え、回路定数を変更しました。
当時日本国内でアンプに必要な全ての電子部品が製造されており、その品質はどれも世界最高でした。
これにより、元の製品より高品質となった模様です。
②小出力化および単純化
音質と無関係な大出力を捨て、パワーアンプを35Wとしました。
部品(特に電源部)の巨大化を避け、過剰な発熱を防ぎました。
またプリアンプのトーンコントロール部を省いて音声信号が通過する部品数を減らしています。
③部品の高コスト化
音質重視のため、部品には高コストを掛けています。
パワーアンプの最終段のトランジスタは、巨大な缶型で1個1,000円程度していたはずです。
これをプッシュプル×両チャンネルを使用していたので、最終段増幅だけで計4個4千円の部品原価をかけています。
抵抗も全て1/2W以上でおそらく単価30円以上をかけています。
抵抗は容量(ワット数)が低いとコストを削減出来ますが、熱雑音が発生しやすく、スピーカーからシャーという雑音が聞こえてしまうので、容量は重要なポイントです。
入力をゼロにしボリュームを目一杯開いてスピーカーに耳を近づけても何も聞こえないのが良い音の最低条件です。
④音質以外の付加価値の放棄
オーディオ業界では筐体を高級化・重量化して付加価値をアップし、販売価格を高額化することがよく行われていました。
クリスキットは入れ物のデザイン料を省き、電磁シールドのみが目的の外観です。
広告宣伝も抑えられており、ネットが無かった当時、情報入手には苦労させられた思い出があります。
⑤製造原価の顧客転嫁
社内や外注先で組立することをせず、部品のまま販売されました。
これにより製造経費が掛からず、音質の為の原価率が高い製品となりました。
こんな方法がとれたのは、当時の音質を追求するオーディオ愛好家が、ハンダ付け程度はこなす方が多かったと思われます。
クリスキットの音質
雑音が無くスッキリとした、定位・分離の良い音がします。
違いを最も感じるのはソロボーカルです。
まるでそこに歌手が居るかのような再現性だと思います。
ミニコンポなどのひとかたまりにモールドされたパワーアンプICでは決して出せない音です。
真面目に部品を選択し、太めの線材でしっかり結線すれば、音を汚す要素がありません。
クラシックやジャズにもピッタリの最高音質です。